緊急企画:「ヒアリ」その対策と外来生物への対応(2017年6月。update:7/5)
2017年6月18日,神戸港のコンテナから日本で初めて発見された「ヒアリ」。アメリカや中国などで猛威を振るい,刺されると死に至ることもあるアリということですが,『生物の科学 遺伝』では,2009年5月号特集II「外来昆虫類の脅威」で「無敵のアカヒアリ」(岸本年郎・自然環境研究センター,現・ふじのくに地球環境史ミュージアム准教授)の論文がヒアリの直接の被害を中心に書かれています。また,最近の2017年1 月発行号特集I「外来生物の駆除への取り組み」でアルゼンチンアリなどの駆除の歴史について特集しています。
【訂正】2009年5月号の内容に,一部訂正が入りました。詳しくは次項をご参照ください(updated:7/5)
NTSもしくは各書店にお申し込みいただければご購入いただけますが,一部の既刊号は電子版のダウンロード販売も行っております(https://iden-online.stores.jp/)。
正しい知識を得たうえで,不用意に騒がず,また関係機関の調査・駆除への取り組みにご協力いただきますよう,お願いいたします。
★兵庫県立人と自然の博物館で7/1から緊急速報展「ヒアリとアカカミアリ」が始まりました。標本の展示もあります。下記をご参照ください(updated:7/3)。
★琉球大学の辻和希教授が,ヒアリの見分け方や刺された場合の対処法などをまとめたサイトを立ち上げたと6/30にNHKで報じられました。下記にリンク先などを記載しました(updated:7/4)
★国立科学博物館の夏の特別展「深海2017」(2017/7/11~9/3)に先行して,ミュージアムショップ(日本館B1)で関連号4冊が企画コーナーに展示されました。
2009年5月号特集II「外来昆虫類の脅威」で「無敵のアカヒアリ—その生態・被害を侵入を防ぐために」(岸本年郎・自然環境研究センター,現・ふじのくに地球環境史ミュージアム准教授)を掲載しています。(本体価格1,600円+税)
■筆者より,内容についての一部訂正があります。コメントを以下に掲載します。
【米国におけるヒアリの死亡者数について:
「年間100名の死亡者」を撤回します】
米国におけるヒアリの死亡者数については、これまでに「年間100名」という数字が良く使われてきました。
この数字はヒアリについての教科書であるTaber, 2000. Fire Ants. Texas A & M University Press.に出てくるもので、そこには、「The number of death per year has been estimated at one hundred is probably underestimated」(年間の死者数が100名という推計はおそらく過小評価である)との文章があります。またこの言説は、日本での唯一のヒアリ解説本である「ヒアリの生物学 行動生態と分子基盤」(海游舎)でも、引用されています。また、この本の中ではアメリカ農務省農学研究所のヒアリ防除研究の第一人者であるサンフォード・ポーター氏も「ヒアリの刺傷による死亡者が年間わずか80人にとどまっている(Kemp et al., 2000)ことは、まだ幸運と言えるかもしれない」との言葉もあるのです。これらのことからこの数字が使われてきたもので、私もこれらを引用してきました。
日本でのヒアリの侵入が発見され、話題となったことを機にこの数字について、再度調べてみました。信頼のおける資料や一時文献としては、Rhoades, et al., 1989. J. Allergy & Clinical Immunology.84: 159-162に書かれている、少なくとも1989年までに84の死亡例があるとの事例しか見つけられませんでした。どうやら年間100名というものは、ヒアリの教科書に載っていた言葉ではあるものの、データを伴っていないもののようです。しかしながら、米国のヒアリ防除の専門家が「年間100名の死亡者」と公言していることも事実で、概数としてそのような数字が専門家内で共有されているのかもしれません。今のところ死亡者についての正確な数字は不明で、確実な情報が得られるまでは、「年間100名の死亡者」という言葉は撤回致します。
岸本年郎 2017年7月5日
(https://www.facebook.com/toshio.kishimoto.7)
■ 『生物の科学 遺伝』では,リード文および2ページ目の本文の2カ所について,上記に従って訂正いたします。
■冊子購入
お近くの書店にて、「生物の科学 遺伝」の「2009年5月号」とお伝えして、ご注文ください。ISBNコード(9784860432799)も併せてお伝えいただくと、なお確実です。また、書店でのご購入がご不便な方は株式会社エヌ・ティー・エス営業部(TEL:03-5224-5430)へ直接ご注文ください。
■書店
6月28日以降,東京の三省堂書店神保町本店5Fで店頭展示を開始する予定です。在庫確認は,同店03-3233-3312か,Web検索https://www.books-sanseido.co.jp/shop/kanda/で可能です。
→現在店頭では販売しておりません。お求めの方は通販サイト「e-hon」をご利用下さい。
https://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refISBN=978-4-86043-279-9&refHpStenhnbCode=0295
2017年1月号特集I「外来生物の駆除への取り組み〜科学的知見と分析に基づき計画的に防除」では,今回のような外来生物をできるだけ早い段階で防げなかった場合の駆除の困難さについて特集しています(監修:五箇公一先生(国立環境研究所)。広がったアリの例として,アルゼンチンアリのケースを掲載したほか,ミバエ,マングース,オオクチバスの駆除の現状を紹介しています。ヒアリそのものの影響には触れていませんが,なぜ多くの機関が真剣に取り組んでいるのかを理解する手助けになる号です。ほかに話題になっているニシキゴイの放流などにも関係してきます。(本体価格1,600円+税)
■冊子購入
お近くの書店にて、「生物の科学 遺伝」の「2017年1月号」とお伝えして、ご注文ください。ISBNコード(9784860434830)も併せてお伝えいただくと、なお確実です。また、書店でのご購入がご不便な方は株式会社エヌ・ティー・エス営業部(TEL:03-5224-5430)へ直接ご注文ください。
■書店
東京の三省堂書店神保町本店5Fで6月23日から店頭展示しています。
→現在店頭では販売しておりません。お求めの方は通販サイト「e-hon」をご利用下さい。
https://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refISBN=978-4-86043-483-0&refHpStenhnbCode=0295
■PDF版のダウンロード販売(有償,プリント不可,クレジットカード決済のみ)
以下のサイトより,本号の当該論文のダウンロードが可能です。
https://iden-online.stores.jp/items/5d106320698fa53dab1cf6cd(全冊PDF。2,000円)
https://iden-online.stores.jp/items/5d1062731fdaf573db7d6233(特集のみ。1,000円)
https://iden-online.stores.jp/?category_id=5d099e8f1fdaf56c2e25e88c(2017年1月号の個別論文。200円〜)
環境省の関連ページとPDF
環境省の「ヒアリ」に関するお知らせと,解毒,捕獲などの対処法についての情報は,下記リンクをご参照ください。
http://www.env.go.jp/press/104185.html
ストップ・ザ・ヒアリ(ヒアリの特徴・生態・駆除方法・刺されたときの対処方法等の参考)
https://www.env.go.jp/nature/intro/4document/files/r_fireant.pdf (ダウンロードがすぐ始まります)
緊急速報展「ヒアリとアカカミアリ」(7/1〜9/3)兵庫県立人と自然の博物館
兵庫県の兵庫県立人と自然の博物館で緊急速報展「ヒアリとアカカミアリ」が
平成29年7月1日(土)~ 平成29年9月3日(日)開かれています。
自然・環境評価研究部 主任研究員 橋本佳明さんが担当です。
こちらには,ヒアリ3点(台湾産)、アカカミアリ4点(マレーシア産)のサンプルも展示されているとのことです。
http://www.hitohaku.jp/exhibition/planning/solenopsis.html
★7月19日から,『生物の科学 遺伝』の関連号2009年5月号,2017年1月号の論文抜粋ポスターと,サンプル誌が,同展脇スペースで 展示されています。写真の右の2枚のポスターが『生物の科学 遺伝』が提供したものです(写真撮影協力:兵庫県三田氏在住のK氏)。
琉球大学の辻和希教授によるヒアリの見分け方や刺された場合の対処法などをまとめたサイト
琉球大学の辻和希教授が,ヒアリの見分け方や刺された場合の対処法などをまとめたサイトを立ち上げたと,6/30のNHKで報じられました。https://sites.google.com/site/iussijapan/fireant
ご参照ください(2017/7/4)。